ニューヨーク・タイムズ

スタートアップにとって、エンジェル投資家は何人いると多すぎるのか?

ナンシー・フアは、2日間で21人のエンジェル投資家から約200万ドルを調達したスタートアップ、Apptimizeの最高経営責任者である。昨年、シリコンバレーの主要なプレイヤーを含む、約3,000人のエンジェルがこのような投資を行った。ニューヨーク・タイムズのPeter Earl McCollough

カンファレンスで潜在的な投資家に彼女のスタートアップを発表した直後、ナンシー・フアは熱心な求婚者たちから懇願を浴びせられた。わずか48時間後、そのシリコンバレーの起業家は、エンジェル投資家として知られる裕福な個人たちから約200万ドルを集めていた。

フア氏が資金を調達したエンジェルの総数は21人。そして断っていなければ、彼女はもっと多くを得ることができた。

「私のピッチが始まってから30秒以内で、3人が私の会社に投資したいとメールで知らせてくれました」と29歳のフア氏は、昨年資金調達を発表した彼女のスタートアップ、Apptimizeの資金調達の経験について述べた。「私たちが資金の調達を辞退した人は数十人います。」

起業家にとって、数多くのエンジェル(そしておまけに著名なエンジェル)を捕まえることは、ある種のトロフィー収集、つまり彼らの企業に対するリスクを伴う競争となっている。また比較的新しい投資家にとって、アツいスタートアップへの賭けに勝利することは、シリコンバレーの文化資本における豊かな恩恵を受けることとなる。

ベンチャーキャピタルを研究するリサーチ会社、CB Insightsによると、昨年、2010年における822人の3倍以上となる、2,960人以上のエンジェルが資金調達ラウンドに参加した。リード投資家のいない、エンジェルが多い資金調達ラウンドのあだ名さえ存在する。「パーティラウンド」である。

「シード投資はシリコンバレーのステータスシンボルです」と、AirbnbやRedditなどの企業を生み出したスタートアップアクセラレーター、YCombinatorの社長であるサム・アルトマンは言う。「ほとんどの人はフェラーリを欲しがらないです。彼らは勝利のシード投資が欲しいのです。」

しかし、若い創業者がベンチャーキャピタルから資金調達をするのにおそらく最適な時期の1つを利用している一方で、重大な欠点が存在し得る。たとえば、多くのエンジェルが関わっている場合、その企業が困難に面していても、それを助けようと強く感じる投資家はいないかもしれない。

しかし同時に、十数人以上に及ぶ現場の投資家を抱えることは、企業戦略に関する十数以上の意見を得られることを意味する場合もある。

Mattermarkの最高経営責任者、ダニエル・モリルは、これを初めて発見した。彼女は2013年に非公開企業の成長を追跡する同スタートアップを設立し、個人からの約160件の投資を受けることになり、そのうちの多くは約5万ドルの小切手を書いたと述べた。投資家はしばしばMattermarkのプロダクトの方向性について口出しをすると彼女は言い、礼儀正しく彼女は彼らを励ましている。

「あなたは彼らの集合知を尊重し続けたいので、『フィードバックをありがとう』と言い続け、彼らはそれを送り続けます」と、モリル氏は言う。「しかし、それから午前3時には一人でそこに座っていて、小さなチームを集中するためのただ一つのことを決めなければなりません。あなたの心は飲みすぎた時のように揺れ動きますが、あなたは完全にシラフなのです。」

アドバイスの大洪水に対処するために、モリル氏は多くの提案に対して耳を塞ぎ始めなくてはならなかったと述べた。「試合に勝つために、バスケットボール選手が音楽を再生し集中するBeatsのコマーシャルが大好きです」と彼女は語った。「そのように感じられるのです。」

膨大な数のエンジェルたちは、シリコンバレーで過去5年間にわたって信じられないほどの富を創造している。Facebook、Twitter、Workday、LinkedInのような企業の株式公開は、数多くのテック億万長者を生み出し、その多くが豊富な資金を次世代の新たな起業家のために費やしている。

たとえば、Facebookの元従業員の2人であるデイブ・モリンとケビン・コレランは現在、活発なエンジェル投資家である。マックス・レヴチンやマリッサ・メイヤーのような他の有名なエンジェルたちは、GoogleやYahooのような若干古いウェブ企業での時代に数千万ドルを取得した。

Pinterest、Uber、Lyftなどのシリコンバレーを代表するスタートアップは、数十億ドル規模の資金調達ラウンドを積み重ねる努力により、ここ数カ月で注目を集めてきた。しかし、テクノロジースタートアップの熱狂は、これより遥かに早い段階から始まる。それは、これらの企業の多くに、ほんの数人の従業員とMacBook Proしかないときである。

狂乱は今や、小さなスタートアップが前例にないほど多くのエンジェル投資家を集めるところにまで至っている。プログラミングのスタートアップであるCodeFightsや、データ分析企業のAmplitudeは、昨年、それぞれ約30人のエンジェル投資家を確保したと語った。CB Insightsによると、モバイルショッピングのスタートアップであるSpringは、2013年に実施された最初の資金調達ラウンドで約45人の投資家を迎えた。自らを人間関係ソフトウェアのスタートアップと称するZenPayrollは、56人のエンジェルを持つ。

CodeFightsの共同創業者であり最高経営責任者のティグラン・スローヤンが今年の資金調達先を探していたとき、彼はコミットしてくれる有名なエンジェルを獲得したいと考えていた。彼は初期のFacebookの従業員であり、Q&AサイトQuoraの共同創業者であるアダム・ダンジェロに連絡を取った。

「私がアダムにそのアイデアをピッチしたとき、彼はとても熱心に聞いていました」と、スローヤン氏は言う。ダンジェロ氏が投資に合意してから1ヵ月が経つ3月までに、CodeFightsは30人以上の投資家から250万ドルを調達した。「信頼できる名前を見てから、誰もが投資したがりました」と、スローヤン氏は述べた。

Facebook株を売却した後にエンジェル投資を始めたダンジェロ氏はメールの中で、CodeFightsの創業者の経験、すなわち消費者が既に同スタートアップの製品を使っており、上手くいけば同社の潜在的市場は大きくなるという事実に惹かれたと述べた。「ここには多くの可能性があります」と彼は書いている。

これは、過去にスタートアップが典型的に獲得した少数のエンジェル(通常は5人から10人)とは対照的である。「2006年に私が始めたときのエンジェル投資のシーンは、合計で30〜50人のエンジェルというものであり、おそらくその中の3〜5人が非常に活発でした」と、アーリーステージの投資に焦点を当てたシリコンバレーの投資会社、Felicis Venturesの創業者兼マネージングディレクターであるエイディン・センクットは語った。「今ではいくらかお金を持っている全ての人や、その家族とペットが、エンジェル投資をしたがっています。」

ますます増加するエンジェルたちが投資に参加するための競争に拍車をかけており、その結果、疑わしい慣行も見られている。Amplitudeの共同創業者であり最高経営責任者のスペンサー・スケイツは、一部のエンジェルたちはスタートアップに資金を投入することを熱望するあまり、投資条件をほとんど見ていないと述べた。「彼らは一般的な企業価値の評価を行なっていません」とスケイト氏は語った。「彼らはあなたの話を聞いて、あなたは彼らに書類を送るのです。」

エンジェルが多すぎることはまた、スタートアップを害する可能性があり、その企業がいずれかの「リード」投資家を惹きつけるほど十分に強くないと見なされる可能性があると、Apptimizeのフア氏は言う。多くのエンジェルたちは、他人から聞かれたとしても、投資したスタートアップの正確な健康状態を知らないかもしれない。これは、その会社がうまくいっていないという認識を与える場合がある。

「その頭越しの会話は、私が事前に起こると気づいていなかったものです」とフア氏は語った。

これからエンジェルになる人のために、道中の助けがある。アルトマン氏のYCombinatorは新たな個人投資家を育成しており、3月にはカリフォルニア州マウンテンビューにある本社でエンジェル投資の集中コースを開催した。4時間の招待制のイベントには、創業者とそのアイデアを評価するためのヒントや、投資する企業にとってエンジェルがどのように役立つかについてのヒントが含まれた。またそのイベントでは、エンジェル投資とはうまく行うことが難しく、新規参入者はお金を失うことを予期しておくべきだということも強調された。

YCombinatorはまた、若い起業家に向けて、あまりにも多くあまりにも早く取り過ぎてしまうことについて注意を促した。「我々は非常に明確に、少数の投資家を好むべきだと伝えています」とアルトマン氏は述べた。

原文 : https://www.nytimes.com/2015/07/07/technology/for-start-ups-how-many-angels-is-too-many.html?_r=0
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