スタンフォード大学ビジネススクール

マーク・アンドリーセン: "アイデアからエゴを捨てなければならない"

ベンチャーキャピタリストはいかにして革新的な考え方を身につけるかを模索している。

マーク・アンドリーセンが経済状況や科学技術の変化といったような難しい問題について考えたい時は、ピーター・ティール、イーロン・マスク、ラリー・ペイジといったような人たちと空想の中で密に意見を交わすようにしている。マークは彼らのことをシリコンバレーで働いている人の中で最も大胆な人達だと言う。「私には仮想のピーター・ティールが常にいる。私の肩の上に住んでいて、私は一日中彼と口論をしている」

自分より賢い人達と架空の口論をすることによって考え方、発想を鋭くすることができるとマークは言う。「彼らがどのようにモデル形成するかを考えることで、彼らの立場から客観的に物事を見ることができ、偏らない公平な考えを持つことができる。」続けて言った。「次にすることは頭の中で彼らについて知っていることを駆使してビジネスモデルを組み立ててみるのだ。それから自分の中で答えを出す。"オッケー。これが彼らが辿り着くであろう答えだろう。"と。この作業に時間をかけていると、あなたの中で自然とこのような会話が出来るようになる。人々はあなたを見て変わった人だと思うかもしれないが、あなたはこの対話に引き込まれるようになるだろう。」

View From the Topで行われたスタンフォード大学ビジネススクールの学生達との対話の中でアンドレッセンは①変わりゆく経済の中での科学技術の役割について、②キャリアの中でどのようにして自分自身をアピールする機会を利用するか③素晴らしいアイデアはたくさんあるのに、なぜそれを実現できていないかについて彼の見識とアドバイスをした。

科学技術によって仕事が減ることはない。

「以前に比べこの世にはあらゆる種類の仕事が増えた。」しかしそのことによって収入が増えることはなかった。「科学技術の変化によって職種が減っていくのであれば、我々が想定していたその現象は今ごろ起こっていてもおかしくはない。」

より深い問題に移ろう。常に変わり続けている経済状況をいかに利用するか。例えば自動運転車が出てきたことによって、交通機関の仕事をしているおよそ500万の人々の仕事がなくなる。彼らの為に500万の新しい雇用を生み出すことは、一般的に毎月の雇用者数が数10万しか増えていないことからして不可能のように思える。「500万もの数の仕事はかなり多いように思うかもしれない。実際にかなりの数だ。」しかしこの大きなグラフを見て分かるように「アメリカでは毎年平均2100万社もの会社が潰れ、2450万の新しい会社がつくられている。つまり、いかにして500万もの人々に新しい仕事を与えるか、の答えは実際のところここ四半期の内にすでにやってきているのだ。」

視野を広く持ち、常に自分の仮定を考え直すようにしなければならない。アイデアを考える際にはエゴを捨てなければならない。それはすごく難しいことである。

-マーク・アンドリーセン

仕事が消えているのではなく、変わっているという風に考えると、より重要な問題に集中することができる。「この変化を利用する為には、人々をどのように使えばいいのか?この仕事の変化をどのように人々に提供すればよいのか?いかにして機会を拡大するか?」「我々がすべき会話は、より多くの人があらゆる分野の新しい科学技術に触れる機会が増えてきていることであろう。」

視野を広くもつこと

仕事をしていくことは賭け事の連続である。「方向性を決める、一緒に仕事をする人を決めるなどといった賭けをしていかなければならない。時には台無しになるようなこともある。」VCビジネスでも言えるように、2つのタイプの失敗について理解しておくとよいだろう。チャレンジした上での失敗:会社に投資したもの全てを失うことは辛いことである。しかし時間の経過と共にそれを克服することができる。

やらない失敗:そもそも何にも投資しないことはあなたの人生に大きな傷をつけることになる。「すべての大きな成功を残したVCはやらない失敗を経験している。それはかなり大きな失敗である。投資すべきだった会社に、投資する機会があったにもかかわらずしなかった。」アンドレッセンは言う。「賭けをして負けた場合はその賭け分しか失わないが、賭けをしなかった場合の損失は1000倍に及ぶこともある」

なぜ我々はしばしばやらない失敗を犯してしまうのだろうか?「そのほとんどの理由は私たちが"なぜ物事は上手くいかないか"に関してのなんらかの憶測を持っているからだろう。」「アイデアを出す時、あなたはそのアイデアを肯定するような根拠ばかりを探し、反証するような根拠は無視する。そして自分のアイデアに固執するのである。」そういった考え方を持つといい方向に進んでいかない、とアンドレッセンは注意している。なぜなら過去に上手くいかなかったことでも今であれば上手くいくかもしれないからだ。「ただ単にMySpaceが成功しなかったからといってFacebookが今のように大きくなることはなかった、と言い切ることは間違いである。常に視野を広く持ち、自分の中の憶測を考え直すべきだ。」「とても難しいことではあるが、アイデアからエゴを捨てなければならない。」

将来を予測すること

ほとんどのいいアイデアは明らかにいいアイデアなのである。ただそれが今すぐに上手くいくとは限らないだけだ。例えば、AppleがiPadで大きな成功を収める前はニュートンはただの役立たずだった。上手くいくかどうかについての分析をただひたすらやる前に、時が来た時にはいったい何が起こるのか?を考えるといい、とアンドレッセンは言う。

「仮に、自動運転車が実際に流行る、と考えよう。」「その結果何が起こるだろうか?」自動車の発明は根本的に我々の家と職場に対する地理的考えを変えてきた。自動車が出てくる前は人々はより職場に近くなるように都市に住んでいた。自動車が発明され、郊外という概念が現れ、それによって通勤という概念も現れた。「ここに座っている皆が80年後には"誰もこんなこと思いつかなければなあ"と思うであろう。」「我々は皆それが嫌いである。ただ時間を無駄にしているだけだ。」

しかし自動運転車はその時間を取り戻すことが可能である。「突然1時間の通勤時間が有意義な時間となるのである。車の揺れや渋滞を気にすることなく、ただ座っているだけでいいのだから運転に集中する必要がなくなるのだ。もしあなたの車が移動するリビングルームとなったらどうなるだろうか?もしその1時間を子供と遊ぶことが出来たら?もしくはニュースを見たり、テレビを見ることが出来たら?あるいは運転に集中する必要がないから実際に車の中で働くことだって可能になる。」

こういったことを仮定することによって新しいいくつもの疑問が生まれてくる。もし睡眠時間のほとんどを車でとることが出来れば、日常生活の地理的要因は大きく変わり、田舎はもっとずっと栄えるだろう。もし車が移動するオフィスとなれば「その結果として考え得ることは、"会社をどうやって設立しよう?"という考えがなくなるということだ。そうなると会社の設立を支えていたインフラ産業はどうなるだろうか?こういったことが起きるかどうかを知るための初期の兆候は何だろうか?」

こういった疑問を常に問いかけるようにしよう。そうすることで"未来がどのように展開していくのか”についての新しい見方が出来るようになるのである。

原文 : https://www.gsb.stanford.edu/insights/marc-andreessen-take-ego-out-ideas
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