サム・アルトマン

Y Combinator 社長兼パートナー

YC卒業後のスランプと、モメンタムを失わないことの大切さ

YCのバッチが終了する時点でパートナーたちが同意することは、約25%の企業が数十億ドル規模の企業へと成長する軌道に乗っているということです。もちろん、一握りの企業のみが成功するでしょう。ほとんどの企業はそこそこ成功するのみか、まったくうまくいきません。

これらの企業は、YC期間中に美しい指数関数的な成長曲線を描きます。しかし、YCが終了してから数ヶ月後には、成長曲線は水平になってしまいます。このようなことは起こらないほうが私たちにとって良いので、なぜそうなってしまうのかと何度も首を傾げています。

主な問題点は、企業がYC期間中に行っていたことをやめてしまうことです。素晴らしいプロダクトを作り、成長させることにひたすら集中する代わりに、他のことに集中し始めてしまうのです。また、努力の量は減り、効果的に働くことも減少します。YC期間中のピアプレッシャーは非常に力強いのです。

YC卒業後のスタートアップは、このことをあらゆる方法で正当化しようとします。「私たちはより長期的な戦略に基づいた仕事をしているのです。あなたにはわからないでしょう。」「私たちは技術的な負債を一掃しているのです。」「私たちは組織を構築しているのです。」「私たちは今月、PRに集中しているのです。6つのカンファレスでスピーチを行い、リーダーシップに関する記事を2つ寄稿する予定です。」「私たちは他とは異なるのです。成長が最も重要なことではありません。」残念な結果に終わるスタートアップから、このような言葉をよく耳にします。

一般的に、スタートアップは偽りの仕事に気を取られてしまいます。偽りの仕事は、多くの創業者にとって、本物の仕事よりも簡単で楽しいものです。2つの典型的な悪いケースは、資金を調達することと、個人的にメディアに取り上げられることです。多くの有望な創業者が、これらのうちの1つか(たいてい)両方に恋に落ちてしまうのを私たちは見てきましたが、だいたいいつでも悪い結末に終わっています。しかし、偽りの仕事のリストは長いのです。

創業者には、そのタスクが成長することにどれだけ直接的に繋がるのか考えるように伝えています。明らかに、作ることと売ることは、成長するための最善のタスクです。採用などの仕事もまた、優先度は非常に高いです。いつかの時点で、成長率を維持するために採用する必要があるでしょう。多くの弁護士に面接することは、最も優先度が低いはずです。

YC期間中、私たちは徹底して、偽りの仕事をしないようにスタートアップに言い聞かせています。また、どれだけ必死にそのような仕事をしても、失敗するだろうということも伝えています。さらに、私たちは徹底してスタートアップに進歩を求めており、何かがうまくいっていない場合は正直になるように伝えています。YC終了後、スタートアップと連絡を取る頻度は減ります。望むのであれば、私たちから距離を置くことも可能です。しかし、距離を置くこと自体が、たいていの場合において、スタートアップがうまくいっていないことを示す兆候となります。

スタートアップはモメンタム(訳注:勢い)がすべてです。モメンタムがあれば、たいていの問題は乗り越えられます。モメンタムがない場合、問題を解決する方法はモメンタムを得ることのみとなります。創業者はYC期間中にこのことを身に染み込ませますが、多くの人がYC卒業後の数年間で忘れてしまうようです。うまくいっていないスタートアップの創業者は、たいていの場合、燃え尽きやすく、そこから悪循環に陥ってしまいます。実際のところ、私が最も気に入っているスタートアップの戒めの1つは、「決して企業のモメンタムを失うな」というものです。

他にもいくつか共通して見られる問題があります。1つは、大きな資金調達ラウンドを終え、気が緩んだときにくる「やったぞ」という気持ちです。それと関連する問題は、巨額の資金調達をしたり、少しばかり有名になると、物事があまりうまくいっていないことを認めて、方向転換をすることが難しくなるということです。さらに、とても小さなスタートアップは、たとえ悪いプロダクトを作っていても、単なる意志の力だけで成長できてしまうということもあります。しかし、数ヶ月経ち、数字が大きくなるにつれて、このような成長はできなくなります。誰かに愛されるものを作っていないのであれば、成長し続けることはできないでしょう。

それでは、スタートアップはどうしたらこのスランプを避けられるでしょうか?その答えは、本物の仕事に取り組むことです。ユーザーが愛してくれるプロダクトを作り、成長目標を達成することに集中し続けましょう。あなたが説明責任を果たさなければならないような人を、役員会や周囲に持つようにしましょう。YC期間中に積み上げた切迫感を失わないでください。トラクションに関する更新情報を、投資家や誰か読んでくれる人に送り続けましょう(実際のところ、スタートアップのためにこれを自動化してくれる新たなソフトウェアをYCでは作っています。スタートアップがレールから外れるのを防ぐことができればと願っています)。あまり重要でないことではなく、最も重要なことに集中しすぎてしまうという間違いを犯しましょう。そして、他のことに時間が奪われないように徹底しましょう。実際に勝利する前に、勝利したと感じることのないようにしましょう。Airbnbの創業者たちは勝利したと感じていないだろうと、私は未だに思っています。何年も何年も、気を引き締め続けなければなりません。

YCの多くのスタートアップは、1年か2年経ってこれらの教訓を学びますが、学ぶのが遅すぎてしまうスタートアップもあります。そして全てのスタートアップにとって、それを学ぶことに時間を費やすのは無駄です。

私たちが資金提供した最も優れたスタートアップは、YC期間中にしていたことと全く同じことをし続けています。これはとてもシンプルで明らかに思われますが、実際のところ、それを実行する創業者は非常に少ないです。

良いニュースは、意図的に努力すれば、それは実行可能だということです。もし全ての創業者が(YC発であろうとなかろうと)そうするならば、成功するスタートアップの数はおそらく倍増するでしょう。

原文 : http://blog.samaltman.com/the-post-yc-slump
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