ポール・グレアム

Y Combinator 共同創業者

ハッカーニュースから学んだ事 part.2

コメント

悪質なコメントは悪質な投稿よりも難しい問題である。トップページの投稿の質は当初からあまり変わっていないが、平均的なコメントの質はいくらか悪くなった。

悪質なコメントには主に2種類のタイプがある。意地悪なものとバカなものである。この2つのタイプには重なるところが多くある。意地悪なコメントはよくバカバカしい内容になりがちだ。しかしこの2つの対処の仕方は異なってくる。意地悪なコメントの方が防ぐことが簡単だ。害を与える言葉に関するルールを作ればいいのだ。そうすることで人々が悪質なコメントを投稿できないようにするのである。

バカなコメントを防ぐのはもっと難しい。愚かなコメントの境界線がはっきりしていないからである。意地悪なコメントをする人と違ってバカなコメントをする人は自覚していない場合もある。

最も危険なバカなコメントは愚かな内容のものでも、論点のずれた議論でもなく釣りのコメントである。論点のずれた議論の長文コメントは実際のところ数は多くない。コメントの質と長さには強い相関関係がある。コミュニティサイトのコメントの質を比較したければ、コメントの平均的な長さを比較すると良いだろう。コメントの質と長さに相関関係がある理由は、人間の本質に関係しているだろう。単にバカなコメントというのは要点の取違いからではなく内容のなさによるものである。

原因が何であれ、バカなコメントは短い文章のことが多い。他とは違った情報を短い文章に盛り込むのは難しいため、その代わりおかしなことを言って目立とうとするのである。嫌がらせは1番簡単なユーモアの形であるためバカなコメントは人を軽くあしらったような内容になりがちである。

バカなコメントは葛のようなものであっという間に繁殖してしまう。ある投稿が次の新しい投稿に与える影響よりもあるコメントがそれ以降のコメントに与える影響のほうがずっと大きい。誰かがつまらない投稿をしても他の全ての投稿がつまらないものになることはない。しかし誰かがあるスレッドにバカなコメントをするとそのスレッドは一気にバカなコメントで埋め尽くされる。人はバカなジョークに対してバカなバカなジョークで対応しがちだからである。

解決策としてはコメントの返信の反映に時間をかけることだろう。そして内容の質に反比例するように反映の時間を長くする。そうすることで愚かなスレッドの更新率を下げるのである。

人々

これまで説明したテクニックのほとんどが防衛的であることに気が付いた。彼らはサイトをより魅力的にするよりも特徴を守ることに重点を置いている。私の偏見ではなく、それは問題のタイプのせいだろう。HNは幸運にも良いスタートを切ることができたため、あとはいかに特徴を維持していくかの問題である。この原則は他のサイトにも当てはまるだろう。

コミュニティサイトの良い特徴は技術によるものではなく、人々によって作られる。技術は良いものを生み出すよりも、悪いことを防ぐ時に役立つものだ。確かに技術によって議論を向上させることは可能である。たとえば入れ子のコメント場合だ。ただ私はバカや荒らしが多いハイテクなサイトよりも単純な機能しかなくても賢くて親切なユーザーがいるサイトの方がいいと思っている。

だからコミュニティサイトができる最良のことはある特定の人々を引き付けることだ。ただ単に成長を目的とするサイトはどんな人でも引き付けたがる。しかしある一部の人を対象としたサイトは、興味のある人たちだけを引き付け、それ以外の人にとっては居心地が悪いように感じさせる必要がある。私はHNでそれを意識的に行ってきた。グラフィックデザインは出来るだけ明瞭に、そして派手なタイトルの記事は推奨しないようにした。初めてHNを訪れた人たちにとって魅力のあるものだけが投稿されている状態にすることが私のゴールである。

特定の人向けにサイトを特化することの問題は、ターゲットとした人々だけに魅力的になりすぎることだ。HNの中毒性に関して私は重々承知している。私にとって、同じく多くのユーザーにとってHNはなくてはならないバーチャル街の広場のようなものだ。現実世界で仕事の合間に一息つくためにハーバード広場や大学の通りにいくのと同じように仕事の合間にHNにアクセスする。しかしHNに訪れるにはクリックひとつで済み、仕事の一環のようにも感じる。時間を無駄にしているように感じるかもしれないが、何もしていないわけではない。誰かがネット上で発言した間違いをあなたは修正しているのである。

HNが役立つのは確かである。私はHNの投稿から多くのことを学んだ。HNコメントを参考にいくつかのエッセイを書いた。HNがなくなってほしいとは一切思っていないからである。ただ私はHNが生産性のないネット上の中毒物となることは嫌である。何千人もの賢人を引き付けたはいいが、1980年代に起きた麻薬問題のようにその人たちを中毒的にさせ時間を奪ってしまうことだけは避けたい。私たちは恐ろしいほど中毒性のあるサイトを作り上げたが、中毒を防ぐ方法をまだ考え付いていない。いずれか思い付くだろうが、それこそが次に取り組む問題でありたい。

ノート

[1]コメントの平均値と中央値からユーザーをランク付けした。高スコアを除いた平均値は質の高さを表し、中央値は質の低さをよく表しているように見えた。

[2]他にこの実験から学んだことは、人々を階級分けする場合には正確に行う必要があるということだ。これがラピッドプロトタイピングができない原因のひとつでもある。

実際人々を区別しない方が正しいのかもしれない。人は皆違っていて、それをすることは難しく、間違った分類はよくないからだ。

[3]極端な引用をしているリンクを見つけた場合は、私はそのURLを元の記事のものに書き換えるようにしている。そして常習的にコピーした投稿をしているサイトは締め出している。

[4]Diggは不透明なことでよく知られている。問題の根源はDiggの管理者が特別卑怯だからというわけではなく、トップページを作るアルゴリズムが間違っているからだ。Redditのように多く票を得た投稿がページ上位にくるのではなく新しい記事が上部にくるようになっている。

この違いは、DiggはSlashdotから派生したものだが、RedditはDelicious/popularから派生したことによる。Diggは編集者の代わりに投票するSlashdotでRedditはブックマークする代わりに投票するDelicious/popularである。(現在でもグラフィックデザインにその根源をみることができる)

Diggのアルゴリズムはゲーミングに非常に傷つきやすい。どんな内容の投稿であれ新しいものが上部にくるからである。そのためにあらゆる対策をとる必要がでてくる。多くのスタートアップは初期の段階ではある種のごまかしに手を出しており、私はDiggのページ上部にくる投稿は編集者によってコントロールされていたのではないかと思っている。

[5]ビーバスとバットヘッドのやり取りは罵倒だらけで、本当にひどいサイトのコメントを読むときには彼らの声が頭の中で響いている。

[6]バカなコメントをしないようにさせるための技術はまだ見つかっていないと思う。XkcdはIRCチャンネルで非常に優れた機能を追加した。同じ言葉を2度使えないようにしたのだ。誰かが「失敗」と一度発言すると他の人はその言葉を使うことが出来ない。短いコメントでは重複をさけるのが難しいためこの機能が効果的だろう。

もう1つの良いアイデアがバカフィルターである。確率論的なスパムフィルターと同じようなもので愚かか愚かでないかの境界を決めるコーパスに基づいて学習されたフィルターだ。

問題を解決するために悪質なコメントを削除する必要はないかもしれない。長いスレッドの一番下にあるコメントは見る機会が減るためコメントを振り分けるアルゴリズムに質の予測を組み込むだけで十分かもしれない。

[7]郊外に魅力がないことの1つはふらっと立ち寄れる広場がないことだろう。

原文 : http://www.paulgraham.com/hackernews.html
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