マシュー・ムーア

Uberを現金で使う?その体験のデザインと秘訣

Uberで魔法のような支払い体験をデザインするには?

魔法の経験をデザインするには現地での努力が不可欠です。

Uberは、ワンタップで呼び出すことができるプライベートな運転手として想像され、開発されました。そしてあなたの運転手は、乗車したあとお金を手渡しすることを決して求めません。Uberを利用するドライバーパートナーであれば、そもそも手渡しされるのを嫌がるでしょう。そんなエレガントで手間のかからない乗車体験は、常にUberの体験のコアとなっています。

Uberのデザインチームは、Uberを利用する乗客とドライバーパートナー双方のために、Uberのインターフェースであるアプリをどのように改良するかという方法について常に模索しています。そして、インドの製品チームでは、インドのユーザーに特有のとある障壁を取り除き、起こりうる衝突を解消して成長を促進することを目指しています。それを達成するために、インドチームが結成された直後に、私たちは実際にサンフランシスコからバンガロール、そしてデリーまで旅行し、想定される市場を身を以て体験しました。

その道中、私たちはすぐに、インドのユーザーは世界中のほとんどのUberの利用客とは全く異なる支払い環境で生活していることに気付かされました。その違いとは、インドで生活する人の95%がクレジットカードにアクセスできず、また現地で敷かれた規制のために、デジタルで支払うことはむしろ面倒なプロセスとされているのです。もし、これを読んでいるあなたのサービスがUberと同様にモバイル端末上のやりとりに依存している場合、それはインドにおいてはあまり望ましいことではありません。しかし、インドではよく開発された商取引のエコシステムがあります。そしてAmazonやインドのFlipkartのような企業は、顧客のとある主要な支払ニーズを促進することによって繁栄しています。それは、現金です。

サンフランシスコや西側の他の大都市にずっと住んでいると、あなたの家に荷物を届けてくれるUPSやFedexドライバーに現金を使って支払うことは想像もつきません。今日、ヨーロッパ人および北アメリカ人は、現金や貨幣をこれっぽっちも持ち歩きません。インドにおいてもそれほど変わることはありませんが、彼らにとって現金は現代的な支払い方法です。それはとても信頼できるし、サービス料金は無料です。

Uberがインドの潜在的な顧客に使ってもらえることを保証するために、我々はその環境の設計を、現金を前提にして行う必要があることがわかりました。私たちのチームは学んだことを新しい設計ソリューションに適用する準備を整えました。

帰国、そして体験の構築

旅行から帰ったのち、私たちは職場から離れた家に集まって、解決策について額を付き合わせて考えました。私たちは、既存のユーザーがたどる行程と、その中で発生しうる、ささいな、しかしうんざりさせられるような障壁を明文化するすることから始めました。そしてそのあと、現金を使用するユーザーがたどるであろう行程に進み、乗客とドライバーの両方が体験する流れについて余すことなく書き出しました。すぐに、5つのポストイットが壁に貼り付けられ、そのフローが完全にスケッチされました。これらのどれも特に美しい文書ではありませんでしたが、内容は非常に貴重でした。すべてを目で見てわかるというのは安心できます。結局のところ、現金は恐れるに足らないということがわかりました。

チーム全体がその初期のデザイン練習を体験することは、彼らを活気づけていました。ともに旅行し、ともに信じ、そしてともにデザインすることはとても重要で、私たちは皆、自分たちが本物のパラダイムシフト実験に従事しているという実感に包まれていました。

「現金は有用か?」サンフランシスコでの議論

Uberの文化の原則は、”最高のアイデアが勝つ”です。しかし、誰もがすぐに私たちの計画に納得したわけではありませんでした。「現金のやりとりが必要ない」という経験こそが、これまでのUberの製品アイデンティティのコアとなっていたからです。 Uberにおいて、議論が膠着するたびに、私たちはデータを参考にします。そして、そこにデータがなければ、データを実際に生み出しにかかります。インドにおいては現金が支配的だということを皆に納得させるために、私たちは実験を開始しました。それを達成するために、いくつか取り組むべきデザインにおける独特なチャレンジがありました。

体験を正しく心地よいものにするには?

既存のユーザー調査によって、乗客がサービスを使い終わったあと、Uberアプリを閉じてしまったり、端末をポケットに入れたりしていることがわかっていました。私たちは乗客が車から出る際に料金を支払うことを忘れてほしくありません。ドライバーパートナーはまた、運賃を徴収するように彼らが現金を支払わなければならないことを知っている必要がありました。つまり私たちには、乗客が車を降りる前に「支払い」という重要な瞬間を世話する責任がありました。

インドのドライバーパートナーには識字率の差があるため、利用客が現金で支払うことを文字以外の方法で明確に伝えなければなりません。この制約をクリアするために、色や図形、ドライバパートナーが記憶しているアプリの行程を良い意味で覆すことで、現金での支払いが必要であることをリマインドすることにしました。

このアプリ画面の新たな要求を実装するにあたって、インドの都市ではよく知られた無線ネットワークの問題が明らかになりました。インドにおいては、ムンバイや、バンガロール、その他のインドの大都市圏を移動する際、3G、2Gと電波状況がしょっちゅう切り替わったり、さらには全く電波がない地域を頻繁に通過することになります。クレジットカードを前提にした取引においては、支払いが乗車の終了時に処理されるため、これは特に問題になりませんでした。しかし、インドの状況に合わせるためには、旅行の最後に現金で運賃を持っていることが必要不可欠でした。私たちのエンジニアリングチームは、ドライバーパートナーの電話機で料金計算をさせるソリューションを編み出しました。障壁が取り除かれました!

実地検証とその素晴らしい結果

十分に実験の詳細が練り上げられたので、私たちはハイデラバードで1週間のフィールドテストを行いました。 現地の都市に展開していたチームと協力して、参加を志願してくれた少数のドライバーパートナーとチームを組むことができました。 乗客の体験をテストするために、ハイデラバードのUberのチームメンバー全員が、私たち自身が使うアプリで特別な乗車タイプを設定しました。

ルピーでしっかりと武装し、私たちは初めてのUberの現金運行を試すべく通りに向かいました。すぐに私たちの乗車は成功しました!ドライバーパートナーのための現金の処理はいとも自然に行われました。私たちのユーザー調査によると、パートナーは毎週の支払いの間にお金を費やすことを熱望していました。彼らの幸せな顔を見ることは、この検証が素晴らしいものであるこの上ない証拠でした。乗客としての私たちの視点からは、確かにこれまでの体験とは異なるものの、現金での支払いは思っていた以上に簡単でした。私たちも楽しむことができたという点が何よりでした。

実験の結果、私たちの仮説のいくつかは間違っていることが判明したので、我々は新しい気づきに基づいてデザインを微調整する計画をまとめました。 1つは、運行の開始時に、現金支払いであることを知らせるプロンプトを、ドライバーパートナーにとって有用であると仮定したことです。結果としてそれは間違っていました。運行の終わりには、彼らは当初のプロンプトがさほど必要ではないと感じていました。私たちはそれらの一切を削除しました。

ハイデラバードにある素晴らしいUberチームとの楽しい時間はすぐに過ぎました。

一週間ほどでコードに含まれていたいくつかのバグをテストして潰したあと、チームは実験の成功に大変満足してサンフランシスコに戻りました。

データが教えてくれたこと

少数ユーザーでのテストにおいて、現金が有効な選択肢であることが証明されたので、ハイデラバードの乗客およびドライバーパートナー全員に、より広範なテストを展開しました。今になって思えば、テストモードの間ではありながらも、そのデータは私たちにとってとても印象的でした。実際には、現在でもハイデラバードでの運行の大部分は現金で支払われています。

このデータのおかげで、インドのユーザーに現金という選択肢が必要であることを正当化することができ、Uberが運営するすべてのインドの都市において実験が開始されました。現金による運行はナイロビ、ケニアなどの市場でも展開されています。現金も捨てたもんじゃない。私たちはこれまでの結果に興奮しています。あなたの財布にクレジットカードや現金、そのどちらしか持っていなかったとしても、Uberの真の体験を提供するよう努めていきたいと考えています。

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この投稿の草案を編集してくれたAdam Starr、Andrew Crow、Ethan Eismannに感謝します。

原文 : https://medium.com/uber-design/designing-the-uber-cash-experience-649a2749b324
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