フレッド・ウィルソン

Union Square Ventures 共同創業者兼パートナー

Disqusのデモデイのときの話

私は何年もここAVCでDisqusのデモデイの話をしてきたが、その全てを話したことはないように思う。Y Combinator(以下YC)のデモデイが数日前からシリコンバレーで行われており、私は10年前にYC発祥の地であるボストンで行われたデモデイのことを思い出した。

それは2007年の夏のことであった。それ以降YCは講義を夏はボストンで、冬にはベイエリアで開催するようになった。ポール・グレアムはその後ベイエリアに移動し、YCの拠点もベイエリアとなったことから、ボストンで開催されていた夏の講義は終了した。私はパートナーのアンディーが言っている「昔のボストンで行われていたデモデイは特別だった」という意見に賛成である。

数日前、私はポール・グレアムからメールを受け取った。それはYCのチームがデモデイでAVC向けの新製品をローンチしたいという内容であった。彼はそれについて、WordPressやTypepad(当時AVCはそこにホスティングされていた)と一緒に出てきたものより優れた、現代的なコメントシステムであると説明していた。私はTypepadのコメントシステムが本当に嫌いだったため、このポールの話にはそそられた。ただ私はAVCに新しいコメントシステムを追加する作業が面倒でしたくなかった。そこでポールが提案してきたことは、CMSブログへのログイン情報を彼に共有し、それを彼がDisqusの創業者に伝える、というものであった。数日後に私は同意し、Disqusの創業者であるダニエル・ハとジェイソン・ヤンが新しいコメントシステムをAVCに搭載した。彼らはタイプパッドの古いコメント全てを残し、新しいブログのコメント用にDisqusを設定した。

私はデモデイ当日、19社全ての発表を楽しみにしていた。Disqusの番が来てダニエルが登壇した。彼は現在のコメントシステムはひどいと説明し、より優れたものを作り上げたと発表した。そしてAVCのプレゼンテーション用のパソコンのブラウザーに移り、Disqusが活躍する新しいコメントシステムを見せるためにページを下までスクロールした。彼はいかにログインし、コメントを残すことが簡単か、そしてそのページと上手く馴染んでいるかを見せた。それは見事であり、私は感動した。

プレゼンテーションが終わって投資家と創業者の交流の場がある。ポールとジェシカは最高のチーズと塩漬けの肉を用意していた。私はダニエルの所へ行き、彼のプレゼンテーションがいかに素晴らしかったかを伝えた。彼は喜んでいて、私がこれからもDisqusをAVCで使うつもりがあるかどうかを尋ねてきた。当時それがDisqusという名前だったかどうかさえ覚えていないが、もし彼とジェイソンがすぐにわたしの要求する特徴を作ることが出来るのであればAVCに残すつもりだ、と伝えた。

以下が私がDisqusに要求した内容である。当時のタイプパッドのコメントシステムは誰かがAVCにコメントを残す度に私にお知らせのメールが届くようになっていた。ただ、そのコメントに返信するためにはAVCにログインしなければならず、それが面倒で嫌いだった。だから私は当時使っていたブラックベリーの中でコメントの確認と返信が出来るシステムを作るよう依頼した。ダニエルの返事は試してみるということだった。

私の記憶が正しければデモデイは木曜日だった。次の月曜日にダニエルから私が依頼したシステムを週末に作り上げたという連絡をもらった。試しに使ってみるとまさしく私が想像していた通りに動いた。

私はそれまでにこの特徴をもったタイプパッドを作るように何回か依頼したことがあったが誰も作ることは出来なかった。2人の創設者によるこの新しい商品(Disqus)は長い歴史をもった大企業とは全く違うものであるということには気付いていた。しかしダニエルとジェイソンはそれを週末のうちに作り上げ、実際に我々が使えるようにしたのだから感心である。

それ以来AVCではDisqusを採用しており、私は未だにDisqusと彼らに満足している。

実を言うと当時私はDisqusに投資することは考えていなかった。いずれ他のよりよいコメントシステムが出てくると考えていたからである。2008年1月、私はダニエルとサンフランシスコで会った。彼はDisqusは数万のブログで採用されており、AVCのブログにDisqusのプロフィールを使ってコメントした人は皆、その数万のブログでも同じプロフィールを使ってコメント出来ると教えてくれた。それを聞いて初めて私はDisqusはもはやシステムではなくネットワークとなっていることに気がついた。UVCは月にシードラウンドにおよそ30万ドルを投資してきた。以来Disqusの創設者に投資し続けている。

私が思うに、これはYCの真髄である。2007年夏、ボストン市場(彼らはサンフランシスコを拠点としていた)で1〜2ヶ月の間必要としていたモノを2人の"ハッカー"が作り上げ、大勢の投資家に実演して見せ、素晴らしいプレゼンテーションで1人の投資家を魅了し、最終的に彼らに投資するVCを見つけた。私がこの話の中で最も好きなところは彼らが投資家の要求に翌週明けには応えたことである。未だに当時と同じシステムが使われているが、Disqusを採用しているブログにコメントをし、その自分のコメントに返信が来た時にはメールが届くようになっている。そのためこの特徴は多くの人に受け入れられ瞬く間に広まった。古いコメントシステムを採用しているブログに対してDisqusを使っているブログには人々が戻ってきて、会話が弾むようになった。これが顧客の声を聞くことの重要性である。要求にすぐに対応することは顧客を投資家に変えることさえ可能にするのである。

原文 : http://avc.com/2017/03/the-disqus-demo-day-story/
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