ダスティン・モスコヴィッツ

Facebook, Asana 共同創業者

起業家になる、良い理由と悪い理由

更新(2014年9月): スタンフォード大学CS 183Bコースの第1回目の講義でこの題材に関して講演をした。起業家になるという決断についてもっと聞きたい人は、この動画をチェックしてほしい。また、この記事の関連部分にスライドをいくつか追加した。

私たちは最近、AsanaでQ&Aセッションを開催した。私と一緒に、ベン・ホロウィッツ、マット・コーラー、ジャスティン・ローゼンスタインが参加した。Wiredのマーカス・ウォールセンが出席して、シリコンバレーにおける起業家文化に関する私たちの見解を検討する記事を書いてくれた。これは重要な題材だ。だから、少し時間を割いて、私たちが何を意味していたのかをこのブログ記事で明確にしたい。その前に強調しておきたいのは、私たちはシリコンバレーの文化に限定して話していたのであって、もっと一般的な「小規模ビジネスの起業家」について話していたのではない。つまり、セッション時のオーディエンスにとって、起業家とは「シリコンバレーのスタートアップのテック系起業家」という意味だった。

こういった背景があったとしても、間違いなく起業家になるべきではない、ではなく「おそらく」起業家になるべきではない、と私たち全員が言ったことは注目に値する。これは明確に方向性を位置付けるものだ。私たちは、シリコンバレーのエコシステム内には、スタートアップと起業家が多すぎると思っている。だがこれは、このシステム内にこういったものが一切存在すべきではない、と言うのとはかなり違うことだ。多くの人たちがもっと増えるべきだと考えており、私たちはそういった見解の釣り合いを取ろうとしている。極端な意見と釣り合いを取ろうとすると、また極端に見えてしまいがちだ。これはメディアで紹介されると確実にそうなる(これは、統合に関して私が前回の記事で指摘した点と関連している)。

起業家になる理由として私たちが一番好きなのは、あなたが何か激しく情熱的になれるアイディアを持っていて、新しく会社を始めることがこのアイディアを世界へ送り出す最高の方法だと信じている、というものだ。この情熱は大事だ。起業は難しいもので、困難を乗り越えるには、そして他の人たちを説得して助けを得るには、情熱が必要になる。新しく会社を始めることが、このアイディアを世界へ送り出す最高の方法だと信じることは、リソース−最も大事なリソースとして、あなた自身の時間も含まれる−をできる限り最適な方法で活用するにあたって重要となる。既存のチームによってアイディアを世界に送り出すことが一番だという場合、世界にとってはこれがこの方法で起こるのが、類語反復的に最適だ。もちろん、誰もが実際に自らの影響力を最適化しようとしているわけではないが、多くの起業家たちはそうしていると自ら認めている。こういった人たちにとっては、この観点を考察してみるのは重要なことだ。

もしあなたが影響力を最大化しようとしていないのならば、あなたはその代わりに何か個人的なライフスタイルの好みを中心にして最適化していると仮定するのが合理的に思われる。あなたはどう暮らしを立てるかを選ぶ完全な自由を求めていて、これが多大な価値を他の人たちへ必然的に提供するものかどうか、あるいはそれがすでに存在しているものと重複するかどうかは関係ない。あるいは、あなたは自分のスケジュールに極限の柔軟性を求めていて、これには、突然の通知で長期間働くのを止めてしまえる能力が含まれるのかもしれない。あるいは、ある特定の問題に取り組んだり、特定の種類の人たちと働きたいのかもしれない。様々な好みに関して、こういったものをあなたに与えてくれる会社を見つけられるだろうが、自分の会社を始めるのはすばらしい近道で、私個人としてはこれはまったくもって妥当だと考えている。世界に大きな影響を与えることを求めている人たちが、私は好きだ。だが、これだけが唯一選択する価値のある道だというわけではない。また、私にはこの種類の起業家を悪く言う理由は一切ない。

以上を考慮して、私たちが実際に話そうとしていた、起業家になる悪い理由をいくつか紹介したい。

「自分が始めた会社のCEOになって、ピラミッドの頂点に立ちたいというビジョンを持っている人たちがいる。それで意欲の湧く人たちもいるが、そうなることは全くない。

実際にはどうかというと、自分以外の全員が君のボスになるんだ−従業員、顧客、パートナー、ユーザー、メディアの全部があなたのボスだ。今ほどたくさんボスを持っていて、これ以上たくさんの人たちに説明責任を負ったことはない。

多くのCEOにとって、自分以外の全員に報告することが彼らの生活になる。少なくとも私にはそう感じられるし、私の知っているCEOの多くにとってもそうだ。他の人に向けて力や権威を発揮したいのであれば、軍隊や政治に参加すべきだ。起業家になってはいけない。」

  • これが華やかなことだと思っている。メディアは様々な起業家を偶像化するにあたって、すばらしい仕事をしている。王様たちに冠を与え、様々なマフィアのゴッドファーザーたちを指名する。だが、これは全て脚色された物語だ。現実は長年のハードワークである。その長い年月において、あなたはそもそも正しい方向に向かっているのかさえわからない。

  • 自分にはものすごく才能があり、この才能から最大限に金銭的なリターンを得る方法は起業家になることだと信じている。なぜ資本政策表をもっと欲しがらないのだろうか?この論理は破綻している。Facebookの100人目のエンジニアは、シリコンバレーの起業家99%よりも遥かに多くのお金を稼いでいるからだ。巨大なパイの小さなスライスは、それ自身もまた巨大なものなのだ。もしあなたにものすごい才能があるなら、潜在的な成長力が高く、比較的リスクの低い会社を簡単に見つけて、そこから積極的な待遇を受けることができるだろう。何年か後にあなたが間違っていたということになっても、また挑戦できる。2回目、あるいは3回目の挑戦で、そしてたいていは1回目の挑戦で、あなたはすばらしい結果を得て、世界へ重要かつ永続的な価値を貢献することができるという自信を得られることだろう。その代わりに「次のGoogleやFacebook」をすぐに始めようとすると、完全に失敗する可能性が非常に高い。あるいは、もっと小さな結果に収斂せざるをえなくなるだろう。成功や失敗に到達するには長い時間がかかる。そのため、何度も挑戦できるものではない。

すばらしい実績を出している、定評のある会社に参加する場合と、自分の会社を始める場合の金銭的な結果の比較。表の右側は、あなたの成功を前提にしていることに注目。

定評のある会社に参加した後に大きな影響力を達成する例。

  • あなたはポール・グレアムが創業者ではない人たちを、動物園の動物に喩えていたのを聞いて、能無し(あるいはチンパンジー)のように見られたくないと思った。ジェフ・アトウッドが指摘しているように、これは事実というよりも主観の投影に近い。ディルバートのマンガから出てきたような感じで、従業員にひどい扱いをする会社がある。それにあなたの知っての通り、良い会社がある。こういった会社で働くにせよ、独立をするにせよ、「魂を吸い取られる」と言い表せる場所では間違っても働いてはいけない。

そう。この観点はいささか虫の良い話だ。私たちがAsanaで雇いたいのは最高の人材で、最高の人材の多くは、私たちのような会社に応募する代わりに、起業家になることを選んでいる。とは言っても、私たちの成功のために雇う必要がある、こういった人材の数はかなり少ない。もっと大きな心配事は、盤上に人材を薄く広げすぎることのマクロ効果と、人々が自分の時間を有益な方法で使っていないことのミクロ効果だ。ザック自身もまさにこの理由で、シリコンバレーは明らかに彼が今日Facebookのような会社を始めようとする場所ではないと推測している。ミクロ効果に関しては、私はジャスティンの説明の仕方が好きだ。「もしあなたがあなたの人生で一番の時期を仕事に捧げようというのであれば、自分自身、そしてあなたのまわりの世界に対する十分な愛情を持って、あなたにとって深い意味を持つ何かに取り組むようにしよう。」

CS 183Bの講演の要約。フアン・パブロ・ソラノ(@solanojuan)作成。

原文 : https://medium.com/i-m-h-o/good-and-bad-reasons-to-become-an-entrepreneur-decf0766de8d#.vfyx7z1in
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