アリー・ロウガニー

スタートアップCEOのフェーズ2の仕事とは? Part2

2. 会社の目的と社員の連携をつくる

CEOが委任することのできない2つ目の仕事は会社の目的と社員の提携をつくることである。メンバーが10人以下で、皆が一緒に座って作業している間は人々の連携にそれほど時間をかける必要はない。メンバーそれぞれが何が起こっているか聞くことができ、自分たちの行っている仕事がどのように目的に沿って向かって進んでいるか理解でき、結論を出す際には皆が意見を発することが可能だからである。人数が少ないと、コミュニケーションをとること、皆の一致を得ることは簡単である。

しかし、新しいオフィスができ、あらゆるバックグラウンドを持った、営業や、会計といった様々な役職の人を雇うようになると、社員の連携をつくることは一気に難しくなる。あなたのチームメンバーはもはや皆の声が届く範囲には座っていない。会社に入ってくる者の面接をあなた1人ですることは難しくなり、社員皆に会うことすら、さらには会合に参加することすらできないかもしれない。

Twitterを例に挙げると、彼らは18ヶ月の間世界中のオフィスで毎月50人を雇っていた。CEO、あるいは役員が毎月増え続ける社員皆に会うことなど不可能であった。

フェーズ1のCEOは会社を引っ張っていかなければならない。しかしフェーズ2に入ると会社を引っ張るよりも会社のゴール、進むべき方向を決め、ペースとパフォーマンスを管理することにシフトしなければならない。その下で会社を引っ張ってくれるリーダーたちが多く現れているはずだ。

ビジネス的に説明すると、CEOの仕事は①ミッション(ゴール、目的)、②戦略(方向性)を決め、③メトリクス(ペースとパフォーマンス)をつくることである。この3つは成長している会社が上手く機能するために必要の要素である。

"ミッションから導かれるメトリクス"のいい例を紹介しよう。

SpaceXの製造工場を訪ねた私の友人が大きい部品を組み立てている従業員を見て「あなたのSpaceXでの仕事はなんだい?」と尋ねた。彼の答えはこうだった。

「SpaceXのミッションは人々が火星に住めるようになることです。そのために我々は繰り返し使えるロケットを創らなければなりません。もし繰り返し使えなければ火星の行き来にかかる費用は莫大でとても手に負えないからです。私の仕事はロケットが地球に戻ってくる時に上手く着陸できるようにステアリングシステムをデザインすることです。ロケットをローンチした後に大西洋にある我々のプラットフォームに上手く着陸することができたら私の仕事が成功したと思ってくださいね。」

この従業員は簡単に「ロケットが着陸するために必要なステアリングシステムをつくっている」と説明することもできた。しかし彼はそれをせず会社全体の"ミッションから導かれるメトリクス"の構造を暗唱してみせた。これが社員の連携である。

あなたのスタートアップに合う明瞭簡潔で、人々に強い印象を与えるようなミッション、戦略、メトリクスを決めることはできるだろうか?ほとんどのフェーズ2のCEOはそれに手こずっている。いざ決めるとなると思っていたよりも難しいことに気がつく。

ミッションは野心的でかつ永久に使用できるものでなければならない。ミッションを考えることはなぜあなたがそのビジネスを始めたかを考えることであり、しばしば変わるようなミッションは採用してはならない。一方で商品戦略とマーケット戦略は少なくとも年に2回は妥当であるかどうか確認しなければならない。この世にはビジネス書と商品戦略に関する書籍が溢れている。どのアプローチを採るにしろ、基礎となるシンプルな方法は役に立つ。書き出すことだ。我々の経験からすると会社の成長とコミュニケーション戦略を効率的に行っているCEOはいつも彼らの長期的な戦略を書き出している。ジェフ・ベゾス( Jeff Bezos)と彼のAmazonチームがやっているように毎回の戦略会議で6ページにも及ぶメモを用意しろと言っているのではない。ただ、長期的な"ミッションから導かれるメトリクス"の構図を書き出すことであなたの考えの全体像をつかむことができるようになる。

効果的なメトリクスをつくることもCEOの重要な仕事のひとつである。よくある失敗は鍵となる社内のメトリクスをビジネスの核である利益やユーザー獲得数などの結果に合わせることである。これは間違ったアプローチである。なぜならば"ユーザーを増やすこと"などのビジネスの核となるものはすぐに結果を伴わないからである。そういった核となるものの結果を残すためには何が必要か深く考え、理解し、それを会社のカギとなるものとしメトリクスに組み込まなければならない。優秀な会社は"成長するために必要なモノは何か"の理解に時間と労力を費やしている。

Facebookの有名な話だが、彼らは新しいユーザーがアプリを使い続けるかどうかは最初の14日間で10人の友達を作れることができるかどうか、に関係していることを発見した。彼らはカギとなる商品のメトリクスに"10人の友達を作っている新しいユーザーの数"を設定した。

何があなたの会社の核となるものの結果を残すのか、そしてそれをメトリクスに組み込む作業には粘り強くなくてはならない。

もし何が利益をもたらすのか、顧客を集客するのか、ユーザー数を拡大するのか分からなければそもそも成功しないだろう。

あなたのスタートアップの"ミッションから導かれるメトリクス"を書き出し、リーダーチームと会社にとって重要な社員からのフィードバックを得たら定期的にそれについての意見を皆と交わすようにしよう。

何が道理的か考えるよりもまず"ミッションから導かれるメトリクス"を繰り返し口にするようにしよう。あなたの直感とは異なるかもしれないが、そうすることが一番効果的である。もしあなたが定期的にメトリクスに関しての意見を交わさなければ、社員はメトリクスのメッセージを自分のものに出来ないだろう。

実際に従業員がそれを自分のものに出来ているかどうかの判断は単に彼らがそれを繰り返すことができているかどうかではなく、あなたの不在時に提供したコンテクストに基づいて良い判断ができているかどうかである。

3.会社の風土を育てる

会社づくりにおいてテーマを決めることは風土づくりと同じくらい捉えづらいものである。

基本的に、会社の風土は社員がお互いにどのように対応しているかによって決められる。それは経営陣の部下に対する対応、そして社員同士の関わり方の両方を意味する。会社風土はあなたのスタートアップに2人目が加わった時点で形成され始める。創設者と早期に加わったメンバーがどのように接するかは会社の風土を決め、それはその後何年も続いていくであろう。

しかし先に挙げた他の仕事と違って風土作りはCEOのみの仕事ではない。社員全員に関係するものである。だからミッションから導かれるメトリクスと違って1人静かな部屋で皆が従わなければいけない会社の主義を書き出す、といったことはしなくてよい。これを1人でやろうとすると失敗するのである。なぜなら社員が会社で感じている現実とあなたの書き出した会社の主義が一致していないからである。自分1人でやるべき仕事だと重荷を感じるよりも、共同創業者と早期に加わったメンバーと共に考え、嘘偽りのない、誰にとっても魅力的な価値観と行動規範をつくるべきだ。そして設定した会社風土が上手く働くためには、それまでに会社が行ってきた方法が、掲げられる風土に反映されてなければならない。そうすることで社員はその風土が不自然でなく本当のものであると受け入れやすくなる。もし過去にみられなかった価値観を会社風土に組み入れたいのであれば、それを会社の風土と決めつける前に試しに社員1人1人にリーダーとなってもらいその方法で行動してもらうようにするとよい。

Pixarの例が分かりやすい。多くの映画スタジオのようにカギとなる価値観は”ストーリーが先にやってくる”のである。つまり、先に価値観となるものを設定してそれに合わせるのではなく、初めからある特徴を価値観とするのである。そして多くの会社に当てはまるように、従業員は会社の一番の資産である。Pixarの従業員はこの価値観を受け入れている。なぜならばそれはまさしく会社の在り方を忠実に再現しているからである。最も納得できる例はトイストーリー2を制作していた1999年にさかのぼる。公開予定のたった7か月前にPixarの創作担当のリーダーはトイストーリー2が創造性に欠けていると感じたのである。PixarのディストリビューションパートナーであるDisneyはアニメーション映画の制作には3~4年かかることを知っていた。Disneyは初めから作り直すには遅すぎるためそのまま公開すべきだ、と抗議したがPixarはそれを受け入れなかった。ストーリーをめちゃくちゃにするよりも1から書き直すことを選んだのである。Pixarのスタジオは崩壊の間際からトイストーリー2の新バージョンを予定通りに公開させるために一生懸命働いた。その結果大きな利益をもたらし、転機ともなるような成功を収めたのである。そして完成した後には役員チームは普通ではない決断をした。皆に十分な休息を与えるために2か月間スタジオを閉めることにしたのだ。

エド・カトムル(Ed Catmull)はこの出来事をスタジオの歴史上最も激しい、そして重要な期間であったと説明している。

「トイストーリー2は私たちを特徴づけるモノとなった。我々は素晴らしい作品と平均的な作品両方を作るスタジオであってはならない。全ての作品が優れたモノでなければならない。我々は自信を持ったストーリーしか公開しないことを証明した。そして自らの時間を割いて仕事に努めてもらうように頼むのであれば、それに見合ったやり方で恩を返さなければいけないことに気がついた。」

「創作に妥協はなし。そして仲間を大切にしろ。」これ以上にPixarの風土を上手く表現するものはないだろう。

あなたを会社の代表として定義づけるものは何だろうか。その答えは過去を振り返ることで分かる。それは創業当初の成功からはかけ離れた時代にまでさかのぼることもある。それは”ストーリーが先にやってくる”のような質へのかかわり方かもしれないし、”全力でいってモノを壊す勢いでやれ”といった働き方かもしれない。1度これらの価値観が決まると、CEOは新しいリーダー皆がこの価値観を反映するように働きかけなければならない。ただ改めて言うが、会社の価値観を守っていくのはCEO1人の仕事ではない。会社に所属しているリーダーや同僚、そして自分自身が同じように価値観を遵守していく役割がある。

シンプルな成功の測り方

「私が最高に調子がいい時は仕事の50%が未計画だ。そんな時こそ考え、私が一緒に話をしたいと思う人に立ち寄り、好奇心を思うがままに発揮する。その時間が私が最も創造性に長けている時だ。この自由な時間なしでは会社のトップには到底なれなかっただろう。会社を引っ張ていくためには常に2歩前に立っていなければならない。後からついていっていては会社をリードすることなどできないだろう」Pixarの経営会議でスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)が言っていた言葉である。

予定のない自由な時間が多くあり、考えることができるのはフェーズ2のCEOにとって成功の兆しかもしれない。それはリーダーとなるチームを採用し、日々の業務を彼らに委託すること、そしてあなたの日常的なサポートなしで彼らが上手く回せるようなミッション、戦略、メトリクスを作ることを意味している。それによってあなたが得ることができるモノは、あなたのスタートアップの将来を計画する時間と考える時間である。

ノート:

[1]YCの共同創業者であるポール・グレアム(Paul Graham)のエッセイ ”Aシリーズのスタートアップのつくりかた(How To Start A Startup)" や ”スケールしないことをしよう(Do Things That Don't Scale)” 以上にこのトピックに関して詳しく書かれているものはないだろう。

[2]このエッセイの焦点はCEOの事業に関する責任についてである。会議の運営と管理、資金調達、報道者との関わりといった事業に直接的には関わっていないこともCEOの仕事である。特にまだあなたのスタートアップが小さければこの業務は重要である。

原文 : https://medium.com/ycombinator/whats-the-second-job-of-a-startup-ceo-886dc81c1c5b
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